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小さな誇り

光のさす方

この土日は大学入試センター試験が行われていますね。

僕が受けたのはも15,6年前くらいになります。

今頃明日にむけてギリギリまでやっている人や

もしくは早々と眠っている人、

それにその親御さん達…色々な時間を過ごしている頃ですね。

 

時折受験の話はするのですが、

僕は高校生の頃は、大学に行くつもりもなくて

毎日音楽とビリヤードに明け暮れている日々を過ごしていました。

学校自体は進学率が高い、地元で言えば進学校の部類に入る高校だったので、

高校に入った瞬間から大学に行くつもりが無い僕や、

僕の周りの友人達は当然若干浮いていたのかもしれないですね。

そんなこともあって、授業なんてまともに聞かないし、

テストの点数だって決して自慢出来たもんじゃない。

数学と化学はすごく好きだったから真面目にやってたかな。

それと外国人のネイティブの先生の実践の英語の授業。

数学はほんとに得意だったから、学年で唯一100点満点を獲ったのは今でも自慢。

ただ100点獲るだけだったら誰も出来るんですけど、

僕の場合は同じ時に受けた世界史のテストが15点という、最低な点数のオマケ付き。

まあ、そんな感じで興味があることしかやんなかったんですが、

ひょんなことから急に大学に行きたいってなって、

たしかそれが2年の秋くらいだったと思います。

その時の5教科の偏差値が49とかだった。世間一般の平均以下。

そんな僕が目指していたのは偏差値63の大学。

当然受かるわけないとかって言われましたよね。

それでも、親に頼んで塾に通わせてもらって、音楽と受験勉強を必死こいてやりました。

音楽活動はもちろんやめるつもりなんかさらさらなかったから

もちろんそれだってガッツリやって、曲作ったり、ライブしたりとか、思いっきり楽しんだ。

受験勉強はきっと誰にも負けないくらいやった。

だって偏差値49だから、63になるためには必死にやるしかなかった。

 

僕は行った塾が良かったと思っています。

僕が通った塾は北九州予備校という、浪人生が通う予備校の高校生コース。

僕は最初から受ける大学、学部を絞っていてセンターは英語、数学、国語の3教科のみの

二次試験は英語のみというところだったから、

当然、数学と国語の授業、そして英語は東大などを目指す人達が行くコースを受講した。

どの授業もとてもおもしろかったのが印象的だった。

その中でも一番僕が影響受けた講師は2人だ。

両方共たまたま英語の講師だったのが、1人は普通コースの英語の先生。

その講師は関西出身の方でしゃべりが面白く、授業などせずに世間話をよくする方だった。

用意されたテキストがペース通りに進まないなんてこともザラだった。

そんな講師がもうそろそろ志望大学へ志願書を提出する頃というタイミングである話をしはじめた。

「みなさん受験番号1番ってどうやってとるかわかりますか?」

という話だった。

みんな受け付け当日に直接持っていくだとか、色々考えたが答えに行き着かなかった。

その講師はこういった。

「簡単です。受付開始日の数日前に届くように送るんです。」

 

からくりはこうだ。

二次志願の受付開始日というのは、あくまでも正式な受付開始日であり、

それまでに届いたものは当然捨てるわけにもいかずに、そのままためてある。

そして早く届いたものから順番に開封して受験番号を割り振っていくということ。

つまり僕みたいにセンターの点数がどうであろうが、

受験する大学が最初から決まっている人間は早々と志願書を出してしまえば、

ほとんどの人間が受験番号0001をゲットするということが出来るということだ。

大体の人がギリギリまでどこを受けるか悩むし、

受付開始日前に出してしまったら、

もしかしたら不備になっちゃって受付しないんじゃないか?

っていう感じで不安になるらしく、

その講師がいうように1週間近く前とかに出す人はいないとのこと。

 

そしてその講師は言いました

「受験番号0001を獲得したら、みんなに自慢して回れ。俺受験番号0001だって。」

つまりこんなに誰しもが覚える受験番号は無いわけで、

同じ大学を受ける人間なら、

「そういえばあいつ0001だって言ってたな」ってなって必ずチェックされると。

だからプレッシャーになるから、絶対受からなきゃ恥ずかしいってなれるって。

0001みたいな番号獲って合格しなかったら恥ずかしいって思えるから効果的だって。

 

僕は一生に1回しかないだろう大学受験だし、

受ける大学だって決まっている。

だったら面白いからやってやろうってことでその作戦にのってみました。

 

もちろん結果はめでたく『0001』。

当日はさすがに入り口に一番近いその席に座る、変な優越感とプレッシャーがありましたね。

でも、なんというか勝手に首席な気持ちになれて、結果は関係なくすごく試験の自体に効果的だったと思います。

一生にうちに1つでもいいから1番を獲ること。

それが成績とかそういうものじゃなくて、こんな些細なことでもいいと思うんです。

なんか、それって今思っても良かったなって本当に思っています。

 

そしてもうひとりの講師が、英語の特別クラスの講師。

この方はいわゆる真面目なタイプの方だった。

授業はかなり濃い内容で、毎回東大の小論文とか、

有名国立や私立の難しい英語の過去問題などを中心の授業で

多分今だったら全くわからないんじゃないかなって思います。

 

英語は好きだったし、だから英語の学科を受験することにしたんだけど、

色々な理由から地元の大学に行くことに決めていて、

本当なら別にその講師の授業なんて受けなくても良かったらしい。

そりゃそうだ、本当なら東大とか受ける人がくる学科だったから。

僕は真面目そうな人達の中で茶髪に染めてたりして若干浮いていた。

 

その講師が受験まで残り僅かっていう時に二人で話すことになった。

「君はどこの大学を受ける気だ?外国語学部志望みたいだから東京外大か?」

たしかこんな切り口で聞かれたと思う。

僕は自分の志望校とその理由を伝えたら、すごく悲しい表情をしていた。

彼は僕にこういってくれた。

「そうか。理由は分かった。今の段階の偏差値では難しいように思えるが、

このままのペースで勉強していたら、君ならその大学は余裕で受かるだろう。

けれど、その大学を受けるからといって自分のレベルをその程度だと思わないでくれ。

君ならもっと上の大学だって受ける人間だという誇りを持って、

そしてその誇りを胸に、その大学を受けなさい。

自分の価値を決めるのは自分自身だ。」

普段は怒り狂ったような険しい表情で授業をする講師だったのだけれど、

いつもとは違って少し穏やかに優しい表情をしながらも、

いつも以上にギラギラまっすぐな瞳で僕を見ながら話してくれた。

 

今でもその時の空気というか、その時の講師の表情とかがたまに浮かんでくる。

高校の担任はギリギリまで志望校のランクをもっと下げろと僕に言っていた。

そりゃそうだ、12月の段階とかでたしか偏差値が57とかくらいだったから。

でも僕にはなぜだか自身があった。

親と一緒に担任と話した三者面談でも

「先生大丈夫ですよ。俺、受かりますから。」

って言ってのけた。

 

不安が無かったといえば嘘になる。

けれど、僕には大きなお守りが3つあった。

1つは受験板某0001番。

もう1つは特別コースの講師がいってくれた誇りの話。

そして最後のひとつはこんなに駄目息子なのに黙って最後まで何も言わずに受験を見守ってくれた親。

 

だから、僕は絶対受かるって思ってた。

そして見事に合格した。

受験番号が貼りだされた瞬間、

一番に目に飛び込む『0001』の文字は

本当にほこらしかった。

 

出来ない、無理だって大人に言われたこと。

出来る、お前ならダイジョブだって大人に言われたこと。

その2つを両手に抱えながら、後は信じるのは自分自身しか無かった。

 

自分自身を信じるためにひつようなヒントを

まわりの素敵な大人たちがいっぱい教えてくれた。

だからなんとかやり抜けた。

僕にとっての1番は、とってもくだらなく小さなことだと思う。

けど、それでもあの瞬間に僕はやってよかったと思えたし、

駄目で駄目で仕方ない僕も、本気になればやれるんだって本気で思えた。

 

推薦で大学が決まっているなんて人以外は

まだこれからが戦いだろう。

明日だってまだセンター試験は残っている。

もしかしたら今日の時点で志望校に行けないって自己採点の人もいるかもしれない。

これからそれぞれが、それぞれの次のシーンに向かって進んでいくんだろう。

僕が歩んだあの小さな時間が、誰かの参考になるかはわからないけど、

でも僕みたいな適当でどうしようもない人間だって本気になることが出来たってこと。

 

小さく胸に光るナンバー1はほんの些細なきっかけで作ることは出来るってこと

勇気と誇りとほんの少しの大胆さで、大きく変わることが出来るってこと。

諦めたらそこでおしまいって言う名言みたいなフレーズがあるけど、

どれだけ諦めたくなくたって試合終了のホイッスルは必ずやってくる。

だから、試合終了までどれだけ自分がやれるかを本気で考えて、本気で行動すればいいだ。

諦めるのは試合終了からでも遅くはないから。

 

あの時の自分に恥ずかしいくらい、何度も挫け、何度も駄目人間になり、

それでも今こうして生きている自分がいる。

試合終了まではまだ早いんだろう。

まだ諦めない。小さな誇りと大切なお守りが僕にはあるから。